スピン偏極水素原子線ビームを発生し、それを用いて水素とシリコン表面反応のスピン依存性を調べようとしている。スピン偏極の為には、六重極電磁石を用いる。又、水素原子発生の為には電子線加熱したタングステンチューブに水素分子ガスを流し、高温の先端部に解離水素原子を得るものである。今年度までにこれらのハードは全て完成し、その性能チェックを行っている。以下にその結果を示す。 (1) 水素原子線発生装置 電子加熱用のフィラメントに30mAの電流を流し、加速電圧1kVで水素原子の発生を確認した。確認の方法はシリコン表面に水素原子を吸着させ、その後、昇温脱離法にて水素分子の発生量より定量化した。 (2) 六重極電磁石 水冷機構が付いた励磁コイルに100Aの電流を流し、六重極電磁石が稼働することを確認した。 (3) 偏極水素原子線発生 水素原子線発生装置と六重極電磁石を結合し、偏極水素原子線の発生を試みた。問題として、水素原子計測の為の四重極質量分析計が正しくアラインメントされていないことが判明した。特殊銅ガスケットを製作してビーム軸を調整することにした。 (4) シミュレーション 電磁石中を運動する水素原子の飛跡を計算機シムレートした。その結果、スピン1/2の水素原子が計測器に収束するための磁場強度は3000ガウスと評価された。 (5) 水素反応 無偏極水素原子線をシリコン表面に照射し、水素吸着反応を調べた。又、同位体水素原子を用いて、吸着水素の引き抜き反応の機構を調べた。
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