酸素雰囲気中におけるダイヤモンドは放射光照射により、その表面の照射領域がエッチングされる。0.1torrの酸素雰囲気中で非分散放射光の照射で、エッチングレートは約0.13Å/mA/minであった。このレートは照射中のダイヤモンド基板の温度によらず一定である。これは熱活性を伴わない反応で光励起が本質的であることを示した。また、薄膜フィルター等を用いて、放射光を低エネルギー側と高エネルギー側に分けて照射した結果から、ダイヤモンドの炭素原子のK殻電子励起が価電子励起励起よりも極めてエッチングに対する効率が高く、固体表面からの光脱離に関するKnotek-Feibelman機構がこのエッチングに対しても適用できる可能性を示した。 酸素以外にNO_2及びH_2Oをエッチング気体として用いてエッチングレートを求め、いずれも0.1torrの圧力で、NO_2は0.15Å/mA・min、H_2Oは0.08であった。NO_2はO_2より酸化力が高く、大きなエッチングレートが期待できると思われたが、両者には大きな差が見られず、また、H_2Oの場合は両者の半分のレートであった。この結果は、エッチングレートに対しては分子そのもの性質ではなく、解離した酸素原子の濃度が大きく影響していることを示している。そこで、マイクロ波放電を利用したラジカル源(300W)に酸素を導入し、酸素ラジカルを発生させながら放射光照射を行った。反応槽内の圧力が1×10^<-4>torrの時、エッチングレートは0.16Å/mA・minを得た。ラジカル源を用いない時と比べると、反応槽内の圧力が3桁も低いことから、極めて高いエッチングレートであることが分かった。以上の実験結果から、反応機構の初期の段階では、放射光による内殻励起により多重正孔化したダイヤモンド表面原子層が酸素ラジカルと結びついて脱離していくものと考えられる。
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