研究概要 |
1) 7×7再構成に及ぼす酸素の影響 異なる基板温度、酸素分圧下でレーザー照射後のSi(111)7×7再構成の過渡現象を比較した。低い温度、高い酸素分圧ほど、7×7構造の成長が抑制された。また、この成長の抑制は7×7に相転移していない無秩序領域の優先的な酸化によるものであることをSTMのその場観察で明らかにした。 酸素含有量の異なる2つのSi基板を3つの冷却速度で急冷し、表面に形成される7×7領域の被覆率を比較した結果、酸素含有量の多い基板の方が被覆率が明らかに高かった。この結果は、酸素が7×7構造の形成影響を及ぼすことを示唆している。 7×7再構成におけるO原子の役割を分子動力学法で調査するため、Si,O混在系用ポテンシャル関数を開発した。本関数を用いた分子軌道計算により、O原子が7×7構造形成に要するエネルギー障壁を下げることを明らかにした。 2) イオン照射、STM複合装置によるSi表面改質のその場観察 イオンを超高真空中のシリコン表面に照射する装置を作成し、超高真空中のSi表面を高温その場観察すると同時にArイオンの照射を行い、イオン照射前後の構造変化をリアルタイムで観察することに世界で初めて成功した。 3)ナノ構造のウエハスケール形成 ナノ構造をウエハスケールで形成する目的で、ウエットプロセスにおける表面原子構造と金属析出の相関を研究した。水素終端Si(111)表面への銅の電析では、限られた電位窓において、50nm幅の銅細線が表面に自己組織的に形成された。このプロセスでの銅の析出はSi(111)表ハ上のダイハイドライド構造のSi上に優先的に起こり、モノハイドライド構造のSi上への析出は起こらないことがわかった。
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