研究概要 |
1.倒立型システム顕微鏡にCCDカラーカメラ,ビデオデッキ,コンピュータシステムならびに放射圧付与用レーザー光源を組み込んで実験装置を完成し,ポリスチレン標準球を用いた実験によりレーザー光照射にともなう分散溶液中の微粒子の運動形態変化について次の結果を得た. (1)レーザー光のビーム横断面方向では,個々の微粒子はビームの中心に引き寄せられて本来のブラウン運動で取り得る空間領域が制限された運動を行う. (2)ビーム伝播方向では,個々の微粒子はビームウエイスト周辺でほぼ一定速度でビーム伝播方向に並進運動をする. (3)いずれも方向における運動変化も,レーザー光の出力の増加およびレーザービーム径を縮小するに伴って顕著になる. 2.実験で観察された微粒子分散系の運動形態変化に対する理論的根拠を与え各種パラメータとの関連を明らかにするために,Fokker-Planck方程式と一般化Lorenz-Mie理論を用いて放射圧力が存在する場合のブラウン運動粒子を表現する偏微分方程式を導出し,その計算機コードを開発した.これを用いた計算機シミュレーションの結果,実験により観察された個々の微粒子の3次元運動をほぼ正当に表現できることが分かった.現在は,計算機コードに個々の微粒子からの遠方散乱光場の計算モジュールも組み込んで,さらに分散系からの動的光散乱特性の特徴の解明を進めている. 3.光放射圧が作用する微粒子分散系では,状況により複数の微粒子がビームスポット周辺に凝集して抑制されたブラウン運動を行う場合が観察された.この場合.個々の微粒子間の距離は光の波長程度あるいはそれ以下となるため,レーザー光波は微粒子により多数回散乱された後,媒質を出射することになる.この多重散乱媒質での光散乱として特徴的な後方散乱エンハンスメント現象をMonte Carloシミュレーションにより計算機上で再現し,凝集した微粒子のフラクタル次元と後方散乱エンハンスメントピークきの形状(傾き)に関係があることを明らかにし,微粒子凝集体のフラクタル次元を決定できることを示した.また,シミュレーションコードでRayleigh-Debyeの位相関数を採用することによって,エンハンスメントピーク形状がレーザー光の偏光方向に依存して異方性を示すという事実を明らかにした.
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