研究概要 |
1.光放射圧による液中単一微粒子の捕捉・駆動現象の理論および実験的解析 分散媒質の粒子濃度が極端に小さい場合に顕著となる単一微粒子のレーザービームによる捕捉・ビーム伝播方向ヘの駆動現象を,その終端速度の粒径依存性に注目し,一般化Lorenz-Mie理論による理論および顕微鏡下での実像観測の実験によって解析した.その結果以下のことが明らかとなった. (1)粒子径がスポットサイズよりも小さい場合は,微粒子の駆動速度(終端速度)はビームウエストで最大となり,その値は粒子径の増加に対して単調に増加する. (2)粒子径がスポットサイズよりも大きな粒子では,粒子の終端速度はビームウエストから離れた光軸上の位置で最大となり,その位置は粒径の増加に伴って単調に増加する.すなわち,駆動速度が最大となる位置と粒径との問には1対1の対応関係がある. (3)レーザービームによって捕捉・駆動された液中微粒子の終端速度のビーム軸方向分布を測定することによって微粒子粒径を一意に決定できる可能性がある. 2.微粒子凝集構造からの多重散乱光の時空間特性の解析 比較的高濃度の微粒子分散媒質では,個々の微粒子が凝集してクラスターを形成するとともに,光波に対する多重散乱媒質として振る舞う.このような凝集媒質からの散乱光の特性を,多重散乱媒質からの散乱光に特徴的に現れる後方散乱エンハンスメントに注目し,微粒子の凝集構造と後方散乱エンハンスメントの時空間特性の関係に焦点を絞ってMonte Calroシミュレーションと実験により調べた.その結果,以下のことが明らかとなった. (1)後方散乱エンハンスメイトの形状ならびに相関時間には微粒子凝集体のフラクタル次元に対する依存性がある.具体的には,一様に分布する微粒子の場合と場合と比較して,凝集媒質では後方散乱エンハンスメントの形状は緩やかな傾斜を示し,相関時間は増大する.これは,個々の微粒子が凝集構造を形成したことによる微粒子分散媒質のフラクタル次元の低下を直接反映したものである. (2)後方散乱エンハンスメイトの形状ならびに相関時間に現れるフラクタル次元依存性は,検出する散乱光の偏光方向により異なる.これは,多重散乱で発生する偏光状態の遷移によるコヒーレンスの低下の有無が強く関与しており,平行偏光成分には多数の微粒子凝集体の3次元空間分布構造が強く反映し,垂直偏光成分には微粒子凝集体内部の空間構造が反映することによる. (3)後方散乱エンハンスメントの形状を測定することにより,微粒子分散媒質の分布情報を推定できる.この方法は,単散乱現象では扱うことのできない高濃度微粒子分散系の構造測定として有効な手段である.
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