第一に、2モードファイバのモード間の音響光学結合を利用して機械的可動部のない時間遅延走査法を開発した。ボウタイ型高複屈折(HiBi)ファイバ(遮断波長830nm)を使用し、中心波長740nm、コヒーレンス長35μmのSLDでLP_<01>モードを励振する。ファイバは被覆を除去して直線状に張り両端をV溝に固定する。ファイバの一点に小さなAl製円錐ホーンの尖端を接着剤で接合する。ホーンをPZTディスクにマウントし、PZTをファイバのビート長が音波波長と等しくなる11.07MHzの高周波矩形バーストパルス信号で変調することでLP_<11>モードへの変換を発生させ、これにより時間遅延差4.3ps/mの移動ビームスプリッタを実現した。音波パルスによるモード間結合はLP_<01>モードの損失測定から8〜10%と見積られた。干渉ピーク位置の測定から音波の群速度は3636m/sであり、このファイバ音響光学スキャナは2.08psの時間遅れを145μsで走査することができた。第二に、開発した遅延時間走査法の低コヒーレンス・ファイバ干渉計測への応用を研究した。ファイバ音響光学スキャナを用いて低コヒーレンス干渉計を構成し、発生した生の干渉信号をアナログ回路を使って干渉縞束の包絡線およびその微分曲線を出力した後、高速比較器によって方形波パルス化した。方形波の立ち下がり位置を2台の時間間隔測定カウンタを用いて測定することで、時間遅延を絶対測定した。センサ実験として、偏光軸を傾けて縦接続した2本のHiBiファイバを用い、それをチェンバ内に挿入した。チェンバの温度を20、32、45、65℃と階段的に変え、0-1600μεの引張り歪みをファイバに印加した。得られた温度、歪み感度はそれぞれK_T=-2.4fs/℃-m^<-1>、K_ε=0.014fs/μεであった。カウンタ出力の標準偏差から求めたセンサ分解能は0.7℃、40μεと良好な結果が得られ、歪み温度の分離・絶対測定を可能にする新しい有効な手法が実証できた。
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