研究概要 |
超短光パルス技術は高速大容量の情報の記録,伝送,処理に対しても非常に有用であるが,モード同期レーザに代表される従来の大形システムはこの目的には適さず,レーザの種類を問わずにレーザ外部で電気的に自由に制御できる小形の短パルス光源の研究,開発が望まれている.そこで本研究は,当研究者らが一貫して続けてきた制御性に優れた電気光学的超短光パルス生成の研究をさらにおし進め,その可能な極限を追究しようというのものである.今年度に得た主な成果をまとめると以下のようになる. ・大振幅位相変調器の改良と設計 周期分極反転による疑似速度整合を採用し,種々の構成の大振幅動作電気光学位相変調器,偏向器の開発を進めた.特に,分極反転電流の高精度制御,アニールの改善による残留歪みの低減と電極の改良を進めた.この結果,EO結晶にLiTaO3を用い,動作周波数に16GHz帯を用いて,THz幅の変調サイドバンドを安定に得ることに成功した. ・新構成の大振幅位相変調器の開発とそれを用いた背景光のない超短光パルス生成 正弦波大振幅位相変調光には周波数アップチャープ部,ダウンチャープ部の双方が含まれるため,正負いずれの群遅延分散回路を用いても,パルス圧縮生成が可能になるが,一方の周波数チャープ部しか圧縮されず,残りの半分の成分が背景光として残って,光パルスの性質を悪くしている.この点を解決するために,周期分極反転の形状をレンズ状にし,レンズ変調効果も兼ね備えた新しい位相変調器を考案,試作した.これを用いるとアップチャープ部とダウンチャープ部ではそれぞれ凸レンズ,凹レンズとなるため,被変調光ビームの集光部にスリットを配しその位置を調整することにより,必要とする向きの周波数チャープ部のみを選択抽出できる.16GHzの変調周波数で実験を行い,外部変調では世界最短の520fsパルスを背景光フリーで生成することに成功した.
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