平成10年度には下記の点を明らかにした。 (1) 長短パルス高出力レーザーシステムの高性能化 現有の長短パルス固体レーザーシステムに新たにレーザー用光学系を付加することで複数の光パルスを遅延発生させ遅延時間を数百〜数千フェムト秒で任意に変えることができるようにした。さらに、偏光板やレンズを組み入れることで任意の偏光状態や集光強度を得ることが各パルス毎にできるようになった。 (2) 多価イオン生成に関する基礎データの取得 多価イオン生成を長短パルスレーザーによる光電界電離法により行った。理論的に予想される多価イオンの価数、また自由電子のエネルギー分布と、前述のレーザーを用いて種々の変更状態やレーザー強度を変化させたときの実験値とを比較した結果、大部分において良い一致が得られたため、コヒーレントX線発生のための多機能光源の開発の確認および基礎データの取得が可能となった。 (3) 高強度レーザー照射による軟X線を測定した。照射ターゲットおよびレーザー光条件の変更により数nm〜数十nmの軟X線を発生することに成功した。コヒーレント光は得られなかったものの微小体積内に高密度の多価イオンを生成することに成功したため、本方式の技術的な改良によりコヒーレント軟X線を発生させる可能性が高いことを示した。
|