「昆虫の複眼に学ぶイメージ合成技術の研究」 昆虫の複眼による画像処理システムに学んだ新しいイメージ合成技術を検討している。昆虫は極めて多数のマイクロレンズを有し、これらのマイクロレンズからただ1個のイメージを作成・認識処理していると考えられている。われわれはこのシステムを人工的に作ることに成功している。すなわち2次元配列されたマイクロレンズを多数合わせて、1個のイメージを合成した。しかし、どのような原理で、イメージが合成されるか詳細が不明であったため、今期は結像原理の理論的解明を進めた。 対象とする2枚のマイクロレンズアレイは、石英基板上に反応性イオンエッチングによって形成された凸形状レンズである。焦点距離は約300μm、直径100μmである。これらの2枚の凸レンズアレイ板が共焦点配置となって完全に一対一で重なっていると仮定した。つぎにその2枚のレンズアレイ板の間に若干の回転角度ずれを与えた場合、どのようなイメージが作成できるかについて、光線追跡シミュレーションを行った。解析を簡単化のため、各レンズ中心を通る光線のみを対象とし、レンズ周辺部を通る光線は考慮しなかった。 この解析の結果、 1.像は物体に対してほぼ90度回転する。 2.物体位置と観測者位置を変えることによって、その回転角度は最小50度前後から最大120度前後になる。 3.像倍率は物体位置を変えることによって変化し、その大きさはほぼ6/10から1/10であった。 これらの解析結果は、石英製マイクロレンズアレイを用いて行った実験で得られた結果とよく一致する。今後は結像レンズとしての分解能・明るさ等について検討する。この際、レンズ周辺部を通過する光線もイメージ品質大きな影響を与える重要な要因であるので、レンズ設計シミュレータを使用し検討する。
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