研究概要 |
電荷密度波(CDW)転移を示す2次元伝導体について主として下記の研究を行った。 1)擬2次元伝導体η-Mo_4O_<11>の低温強磁場下における輸送特性の解明のため,微弱な電圧測定が可能なナノボルトメータ及び定電流電源を購入(申請)し,装置系の改良を行うとともに,ノイズが極めて入りにくい光伝送機器(申請)でパーソナルコンピュータと接続して,測定系を整備した。 2)0.3K及び4.2Kで,この物質系の輸送特性の異方性を測定した結果,通常とは異なる伝導機構によることを明らかにした。また,10Tまでの強磁場測定で見いだされる量子振動の異方性について興味ある結果を得た。 3)さらに,特殊な端子づけを行った試料についての同様な測定から,バルクな量子ホール効果らしき振舞いを見いだした。その結果は2次元伝導面に垂直方向に顕著であり,特に,9T付近に現れる異常ピークが特異な温度依存性を示すことを見いだした。 4)この物質は,あるしきい電場以上でCDWが変形・並進し,パルス電場応答測定から,磁場中でこれらの過程が磁場に著しく依存することを見いだした。 5)別のCDW物質であるTaS_2について,過渡熱起電力効果(TTE)測定を行い,この物質系が低温CDW相で示す局在効果に基づく特異な振舞いを見いだした。 いずれも,日本物理学会年会で発表予定であり,一部は,欧文誌に投稿準備中である。
|