本研究を遂行中に得られた成果の中で、工学的に有用と考えられるものに以下の2つがある。 1. インピーダンス変換板を用いる低インピーダンス試料の複素音響インピーダンスの測定法 従来からの超音波を用いる複素音響インピーダンスの測定法では測定対象に直接超音波を照射し、その反射波を測定しているために生体試料のようにインピーダンスが小さい試料の場合、高精度な測定が困難であった。また多くの装置は内視鏡下での使用を想定していないために装置が大型になり、体内での使用が困難であった。そこで本研究では超音波の伝送線路として石英細棒を用い、さらに試料と可変長伝送線路の間に音響変換素子を配置し、高精度な測定を可能とするものである。 測定可能な対象は、生体試料、ゲル状、液体および固体試料であり、測定精度は1%程度である。生体試料を対象とする場合には、胃の良性部分と悪性部分の識別、血管内プラークの識別、動脈硬化の測定等が考えられる。 2. 伝送線路アレイを用いる固体試料の音速分布測定法の開発 厚さが既知の試料を用いた場合には、伝送線路をアレイ状に配置し、電子的に走査することにより電子走査方式の超音波顕微鏡が構成できる。方位分解能は線路の直径に依存するので、光ファイバーを用いれば100ミクロン程度の分解能の顕微鏡が構成できる。
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