研究概要 |
付値マトロイドおよびその交換公理を拡張することによって得られるM凸関数について,そのシステム解析における意義に重点をおいて研究した.具体的には,以下の結果を得た. 1.代表者は混合多項式行列の概念を軸とする工学システムの構造解析手法を続けているが,その文脈で付値マトロイドの双対定理の意義を明らかにした.付値マトロイドの双対定理は,混合多項式行列に適用した場合,変数と方程式を適当な階数微分することによって,ある種の標準形(よい性質をもつプロパ-行列)に移せることを述べている.本研究では,この標準形のインデックスが1以下になっていることを証明し,付値マトロイドの双対定理における標準形への変換が,DAE(微分代数方程式系)の文脈で議論されているインデックス低減過程になっているというシステム論的な意義を明かにした.これにより,従来のアドホックなインデックス低減手法に体系的な指針を与えることができた. 2.M凸関数は離散凸関数(整数格子点上で定義された整数値をとる関数で,適当な意味で離散性を保持する関数)と呼ぶにふさわしい概念である.従来は,おもに組合せ最適化(数理計画法の一つ)の分野において研究が行われてきたが,本研究においては,M凸関数が合成積(infumum convolution)に関して整数性を保存するという性質に着目し,G.Koshevoy氏の協力の下で,その経済学への応用を見いだした.すなわち,経済学における不可分財(indivisible goods)の効用関数をM凸関数であると仮定すると,そのモデルにおいては均衡が存在するという結果である.この枠組みは従来の経済学の文献で扱われたものを殆どすべて包括するものであり,組合せ論的な深い考察が経済システムの解析においても重要であることを示す好例となった.
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