研究概要 |
本研究の目的は,付値マトロイド理論の近年の成果を用いて,マトロイド論的システム解析法をさらに発展させることにあり,以下の成果を得た. (1) 混合行列の数学的成果をシステムの構造解析の道具として利用できるように,組合せ的正準形(CCF)の構成アルゴリズムを実際的観点から改良した.次に,それをソフトウェアの形にして現実問題から生じたいくつかのテスト問題に適用し,計算時間などを測定して,有効な工夫を明らかにした.こうして得られた知見を学術論文(M.Scharbrodt氏との共著論文,Optimization Method and Software)の形で公表するとともに,Mathematicaプログラムの形でインターネット上に公開した. (2) 付値マトロイドの双対定理は,混合多項式行列に適用した場合,変数と方程式を適当な回数微分することによってある種の標準形(よい性質をもつプロパー行列)に移せることを述べている.本研究では,付値マトロイドの双対定理に関連するアルゴリズムを多項式行列の場合に特殊化したものの詳細を検討して学術論文(SIAM J.Matrix Anal.Appl.)の形で公表した. (3) マトロイドのパリティ問題と電気回路理論におけるRCG回路の可解性問題との関わりは,一部の専門家の間では80年代の初頭から知られていたことである.しかし,その対応関係やアルゴリズムの複雑度については,必ずしも正確(あるいは適切)でない叙述が専門書にも見られた.本研究では,混合歪対称行列の枠組みを呈示し,この枠組みと,最近Geelen-Iwata-Murotaによって発見された線形デルタマトロイドに関する双対定理との関係を示し,さらに,その立場からRCG回路の可解性問題の現状を整理して,既存のアルゴリズムより少ない手間で可解性を判定するアルゴリズムを示した.
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