研究概要 |
マトロイドあるいは付値マトロイドの概念を用いて工学システムの組合せ構造を扱う手法を研究することが本研究課題の目的である.本年度は,以下の結果を得た. (1)[室田]付値マトロイドと工学システムとの間の最も重要なリンクは,線形システムの伝達関数行列の極・零点の構造から自然に付値マトロイドが定義されるという事実である.当初,付値マトロイドはマトロイドの基族上の付値としてDress-Wenzelにより導入されたのであるが,ここでは,付値マトロイドのサーキット族の公理系,双対性,二者択一性による特徴付けなどを考察した.これは,有理関数体上の線形部分空間のもつ組合せ構造を,それに属するベクトルの成分の次数に着目して論じるための基礎となる. (2)[室田]群論的対称性を有する分散システムの可制御性を,対称性のみに由来する組合せ構造に着目して(システムパラメータの数値情報を捨象したgenericityの下で)論じた.群表現論の枠組みを用いて問題を定式化し,テクニカルにはマトロイドの双対定理を利用することによって,システム全体が可制御性を保持するために必要な入力数の下限値を導出した. (3)[岩田]昨年度に引き続き,マトロイドのパリティ問題と電気回路理論におけるRCG回路の可解性問題との関わりを明らかにした.混合歪対称行列の枠組みにより,線形デルタマトロイドに関する双対定理とは若干異なる形の双対定理を見出した.
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