研究概要 |
マイクロマシンの実用化は,機械としての信頼性確保,ひいてはそれを構成する微小機械要素の信頼性の上に初めて成り立つものである。本研究課題においては,マイクロマシンサイズの機械的特性およびその環境強度特性を評価するために,微小な動的荷重を精度良く負荷することの可能な環境質制御微小材料機械的特性評価装置を開発し,析出硬化型ステンレス鋼,ベリリウム銅,およびμmオーダの直径を有するアラミド繊維(E.I.du Pont社Kevlar 49)の引張試験および疲労試験を実施した。析出硬化型ステンレス鋼,ベリリウム銅においては平板ジグにより,またアラミド繊維の場合はポリエステル製のタブを使用することにより,マイクロエレメントの引張試験や疲労試験が精度良く行えることを確認した。さらに,アラミド繊維に対しては,真空中と大気中での片振り疲労試験を実施し,金属材料に比較するとS-N曲線の傾きは小さく耐疲労特性に優れていること,また,真空中疲労強度は大気中疲労強度に比べて大きくなり,しかも引張強度特性とは逆の環境依存性を示すことを明らかにした。さらに,空中放置処女材,真空放置処女材,および大気中および真空中疲労試験を中断して,繊維表面性状を原子間力顕微鏡を用いてnmオーダで詳細に観察して,破壊機構に対して考察を加えた。さらに,Si単結晶微小機械要素に対しては,集束イオンビームを用いてnmオーダの切欠きを精度よく賦与することか可能であることを示し,先に開発した微小材料機械的特性評価装置を用いて,曲げ強度に及ぼす微小切欠きの影響を検討した。この結果,μmオーダの微小機械要素では,通常のmmオーダの機械要素では特に問題とはならないnmオーダの微小切欠き効果により曲げ強度が低下することを明らかにした。
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