研究概要 |
本研究の目的は,高温における下限界近傍の疲労き裂伝ぱ挙動の把握と下限界のメカニズムの解明にある.このため,高温疲労き裂伝ぱのマクロ実験を行い,雰囲気の影響,負荷繰返し速度の影響,温度の影響,および負荷変動の影響を系統的に明らかにする.同時に,分子動力学ミクロ解析による疲労き裂伝ぱのシミュレーションを行い,上記各因子の影響を計算面から検討する.これらの結果を総合することにより,下限界近傍の高温疲労き裂伝ぱ挙動の特性を明らかにし,下限界形成機構の主因子を解明する. 平成11年度に得られた主な研究成果は,以下の通りである. 1.SUS304鋼およびNi基超合金を対象として,大気中および真空条件下で高温疲労き裂伝ぱ実験を行った.環境、温度および繰り返し速度が下限界以上の領域におけるき裂伝ぱ速度da/dNおよび疲労き裂伝ば下限界値に及ぼす影響を明らかにした.環境の影響によりき裂伝は特性が低下していることが明らかとなった.2.経年劣化を受けたCr-Mo-V鋼を用いて,下限界近傍の高温き裂伝ぱ挙動を調べた.高温で使用されたことによる影響は比較的小さかった.得られた高温き裂伝ぱ特性をもとに,高温破壊力学に基づき寿命推定を行い,各種因子の影響を明らかにした.3.分子動力学法を用いて,鉄における下限界近傍の疲労き裂伝ぱのシミュレーションを行い,計算手法について検討を行った.また,結晶粒界が疲労き裂伝ぱ特性に及ぼす影響を調べた.さらに,き裂先端近傍に現れる塑性の影響によるHutchinson一Rice-Rosengren場と弾性特異場の違いが下限界近傍の疲労き裂伝ぱ特性に及ぼす影響を明らかにした.
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