研究課題/領域番号 |
09450053
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
木村 雄二 工学院大学, 工学部, 教授 (90107160)
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研究分担者 |
藤原 幸男 工学院大学, 工学部, 助教授 (80100361)
鷹野 一朗 工学院大学, 工学部, 助教授 (70226801)
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キーワード | CVD,IMコーティング / 耐食性 / 電気化学AFMその場観察 / 腐食挙動 / 電気化学測定 / CPCD法 / 欠陥存在率 / ミキシング層 |
研究概要 |
耐熱性・耐食性・耐酸化性・耐磨耗性向上などの観点から行なわれているCVDならびにPVD(IM)コーティング膜の耐食性を中心とした耐環境性などの基本的特性を、欠陥の存在状態ならびに基材との密着性と関連づける観点から明らかにすることを試みた。すなわち、セラミックコーティングの耐環境性機能の劣化過程において果たす皮膜欠陥の役割と付着力の向上による同特性の改善の可能性を明らかにすることを意図した検討を行った結果、以下の事柄が明かとなった。 1. 密封型環境電気化学セルを装着した原子間力顕微鏡(AFM)を用いた液中その場観察と電位ならびに電流密度の同時計測からSUS304ステンレス鋼基材上にCVDならびにイオンミキシング(IM)法により作製したTiN薄膜腐食劣化過程を観察するシステムを構築した。 2. 間欠的な大気中AFM観察から、イオンミキシング(IM)法により作製したTiN薄膜においては、前処理として実施するN^+注入による下地層表面のクロム窒化物の形成に起因する下地層の耐食性の改善が、ピンホール欠陥存在時にも有効に作用し、下地金属の腐食を生じさせるには至らなかった。これに比較してダスト混入欠陥部においては、このような基材の表面改質効果が存在しないために、優先的な腐食を生じさせることを示した。したがって、イオンを打ち込みミキシング層を形成することによる基材との密着性の向上ならびに基材自身の表面改質効果が皮膜劣化抵抗性の改善に対して大きな役割を果たすことを明らかにした。 3. CVD法により作製したTiN薄膜に対する同様な観察から、ピンホール欠陥における腐食の優先的な生成と密着性の良好でない薄膜/基材界面部での隙間腐食の進展がCVD薄膜の腐食劣化過程において重要であることを明らかにした。 4. 密封型環境電気化学セルを装着した原子間力顕微鏡(AFM)を用いた液中その場観察から、CVDならびにIM法により作製したTiN薄膜が腐食劣化して行く過程の詳細なその場観察を行い、同時に電位を一定速度で掃引するのに伴う腐食の進行の過程を把握した。また、これに対して皮膜中に存在するピンホールならびのダスト混入欠陥が関与する程度を明らかにした。 これらの事柄から、CVDならびにイオンミキシング(IM)法により作製されたセラミック薄膜により付与される耐食性・耐摩耗性などの種々の機能が劣化するミクロ・ナノオーダーでの劣化過程を明らかにし、これらの過程の置いて果たす皮膜欠陥の役割を解明した。そしてさらに、N^+,Ar^+などのイオンを打ち込むことによるミキシング層の形成による密着性の改善と基材の表面改質効果がこれらの挙動に大きな影響を及ぼすことを示した。
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