研究概要 |
かみあいねじ部が“抜け"て締結機能が喪失するねじ山のストリッピングは,大事故に繋がる可能性が高く,その防止は極めて重要であるが,従来の設計ではこのことが十分に考慮されておらず,特に動的な繰返し荷重が作用する場合のストリッピング(疲労)については,その発生の事実さえ認識されていなかった。本研究は,この故障の性質及び原因を明らかにし,設計上の指針を得ることを目的に計画されたもので,そのために今年度は,1.有限要素法によるかみあいねじ部の応力解析,2.めねじ部品の形状を変化させた静的及び動的破壊試験,3.かみあいねじ部の変形測定に関する基礎実験を実施した。 応力解析では,ねじ面及び座面の摩擦とすべりを考慮するために,弾性三体接触問題が解析できる新しいFEMプログラムを試作し,計算を実行した結果,すべりの程度によって応力集中の度合いが大きく変化するため,故障モードを正確に推定するためにはメッシュの細分化と弾塑性解析が必要であることがわかった。 購入した材料強度試験機用のジグを設計・製作し,実際のねじ結合部のモデル及びボルト・ナットの組合せで静的及び動的破壊試験を実施したところ,前者ではかみあいねじ部の破壊は起こらなかったが,後者では,ナットの高さを静的な破壊モードの限界点に設定した場合,疲労によるねじ山のストリッピングが発生し,このとき,ボルトの通常の疲労強度も同時に低下することがわかった。 ねじ面のすべり量と関連するナットの変形に関しては,非接触型変位センサ(購入設備)によって測定可能との見通しが得られたが,疲労試験中に安定した測定を行うためには,取付けジグ,変位の校正方法及び姿勢誤差の補正のための信号処理に工夫を要する。
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