研究概要 |
本研究は歯車伝動装置のコンパクト化のための歯面強さの向上を複合表面改質にて成し遂げるための基盤研究である.機械の省エネルギー,低環境負荷,高効率等に対し,伝動装置の軽量・コンパクト化は必須の事柄であり,伝動装置の内でも歯車伝動装置の利点を生かして,この問題に取り組むことが重要な課題となっている.そこで,熱処理により表面硬化された歯車にさらに各種表面改質を施し,歯車強さとしては面圧強さと焼付き強さに対象を絞って,実験・解析により研究し,表面強さ向上機構,表面損傷機構,表面強さ設計法,表面損傷に伴う動的性能評価法を明らかにすることを目的としている. 歯車の接触を2つの円筒に置き換えたローラ試験機を用いて,鋼製浸炭硬化ローラと鋼製浸炭硬化ローラにショットピーニングを施したローラの面圧強さ試験を行った.ショットピーニングを施すと面圧強さは,施していないものに比べ高くなった.ショットピーニングによる表面層の圧縮残留応力が原因であると考えられた.しかし,プラズマ浸炭硬化された粉末焼結ローラでは,ショットピーニングの影響による内部の気孔からの初期き裂が存在していたため,ショットピーニングを施したローラでは施さなかったローラよりも面圧強さは低下した.無電解Ni-P合金めつき処理および浸硫処理を施したローラの転がり疲れ強さとスカッフィング強さを2円筒試験により調べた結果,無電解Ni-Pめっきローラのスカッフィング強さおよび転がり疲れ強さは,未処理ローラの場合より大きかった.浸硫層の摩耗が大きかった浸硫ローラの場合,未処理ローラよりも強さは向上したが,無電解Ni-Pめっきローラよりも強さは低かった.
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