研究概要 |
本研究は,曲げ強度,歯面強度の伝達負荷能力がインボリュート歯車よりも優れた歯車を得ることを目的として,インボリュート・サイクロイド合成歯形,修正サイクロイド歯形といった特殊歯形はすば歯車を開発・設計し,その強度,性能を計算や実験の面から明らかにするものである.初年度の平成9年度には,歯車歯形の設計と歯車切削工具(ホブ)の製作,そして試験歯車を試作して特殊歯形はすば歯車の運転性能試験を行い,歯車の中心距離が設計値どおりであればインボリュートはすば歯車よりも優れた振動性能を有すること,また,はすば歯車とすることによって特殊歯形歯車の振動・かみあい性能が向上することを確認した.続いて,特殊歯形はすば歯車の強度面の優位性を実証するために,特殊歯形はすば歯車の強度に及ぼす歯形のサイクロイドの転がり円半径やピッチ点における圧力角,歯たけなどの影響について検討を行った.平成10年度には,まず特殊歯形歯車として,インボリュート・サイクロイド合成歯形はすば歯車の歯面強度(ピッチング)試験を行い,その強度はインボリュートはすば歯車よりも1.5倍程度高いことを確認した. 最終の本年平成11年度は,パーソナルコンピュータによる特殊歯形歯車のかみあいシミュレーションを試みるとともに,もう1つの特殊歯形歯車である修正サイクロイド歯形はすば歯車の強度試験を実施した.その結果,特殊歯形歯車のかみあいがほぼ再現できるシミュレーション方法が確立できたこと,修正サイクロイド歯形はすば歯車においても歯面強度はインボリュート歯車に優ることが確認された.しかしその強度はインボリュート・サイクロイド合成歯形歯車の歯面強度よりも低いことが明らかとなった.これは,歯形のサイクロイドの転がり円半径が小さいインボリュート・サイクロイド合成歯形はすば歯車が有利であるとの理論的検討結果とも一致している. 以上より,本研究で開発・設計した特殊歯形はすば歯車の振動性能,強度の優位性が確認され,実用に供することが可能と判断できる成果が得られた.
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