研究概要 |
本研究は平成9年度および10年度の2年間にわたり,実験・理論の両面から回転場における層流境界層の乱流への遷移を明らかにするものであり,平成9年度は実験装置の設計製作ならびに数値解析を行った。実験装置は,直径約3000mmの大型回転テーブル上に曲率1000mm,および2000mmの可視化・測定用流路を搭載し,それぞれの流路長さを約2000mmと約2800mmとに十分長く設定したため,ゲルトラ渦ならびにT-S波発生に伴う境界層遷移の過程が,可視化による観察,熱線風速計による変動速度の測定により詳細に調べられる。測定流路は凹面側と凸面側のそれぞれに,50×400mmの断面を持つため境界層は十分な2次元性を確保できる。また,主流部の流速は10〜20m/sに,回転テーブルの回転角速度は0〜8.4[rad/s]の範囲に設定可能であるため,広い条件範囲での実験を実施できる利点を持つ。この実験装置を利用して,平成10年度はゲルトラ渦ならびにT-S波発生に伴う境界層遷移に関する実験を実施する。理論的研究においては,流路回転に基づく境界層内速度分布の変化が,境界層内のゲルトラ不安定性に及ぼす影響を数値解析により詳細に調べた。従来,境界層内速度分布をブラジウスの分布形状と仮定していたが,回転に伴う分布形状の変化を考慮に入れた結果,ゲルトラ渦の波数が小さい領域と大きな領域では,ゲルトラ不安定性の増幅率の変化に定性的な違いが現れた。平成10年度は,流路曲率による速度分布形状変化がゲルトラ型ならびにT-S型不安定性に及ぼす影響を調べると共に,乱流遷移への過程を明らかにしていく。
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