研究概要 |
本研究は,空調機・ヒートポンプ・冷凍機の蒸発器を対象として,冷媒の水平蒸発管内におけるドライアウト点とポストドライアウト熱伝達の特性を明らかにし,それらの精度良い予測式を確立することを目的とする. 本年度は,HCFC-22とHFC-134aを試験流体として,伝熱促進管として実用されている内面ら旋微細溝付管における実験を行い,前年度得ている平滑管の場合と比較して,以下の成果を得た. 1. ら旋溝付管においても,平滑管の場合と同様,ドライアウト発生(開始)点とポストドライアウト域に遷移するドライアウト終了点とが存在し,両点の間には0.1〜0.2のクオリティ差がみられる.ただし,平滑管の場合と異なり,これらドライアウト開始点および終了点のクオリティに及ぼす流量と熱流束の影響は比較的小さく,高流量低熱流束の条件では,それぞれほぼ一定の0.92および0.99の値を示す. 2. 非加熱状態における溝付管と平滑管の過熱蒸気単相流の管摩擦係数の測定値を得た.この管摩擦係数は,平滑管ではFilonenkoの式によって良く再現されるが,溝付管ではそれより45〜65%高い値を示したので,溝付管の管摩擦係数に関する整理式を新たに作成した. 3. 溝付管のポストドライアウト域における熱伝達係数の測定値は,平滑管と比べて,低流量で1.7〜1.8倍,高流量で1.5〜2.3倍大きい値を示す.平滑管の場合と同様,熱伝達係数に及ぼす流量の影響は大きいが,熱流束の影響は小さい. 4. 溝付管のポストドライアウト域における熱伝達係数の測定値は,流量によらず,上記2.で作成した溝付管の管摩擦係数の式を適用して過熱蒸気単相流の式(Gnielinskiの式)から算出される値とよく一致する.したがって,溝付管のポストドライアウト域の熱伝達は,平滑管の場合と異なり,蒸気単相流の熱伝達とみなしてよい.
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