本研究の目的は、溶融シリコンについて、(1)新しい計測技術の開発、(2)分子動力学によるシミュレーション、(3)データの収集・評価と標準化、による多面的・総合的なアプローチにより、現在最も信頼できる熱物性値情報を供給することであり、研究成果は以下のようにまとめられる。 (1)分子シミュレーション 溶融シリコンをGibbsアンサンブルモンテカルロ法で扱うために、ポテンシャルの検討を行い、S-Wポテンシャルを用いて気液層平衡線図と臨界点の推算を行った。その結果、臨界温度は7500±500K、臨界密度は750±100kgm^<-1>と推算された。 (2)表面光散乱法 現有の装置を高温での精度向上のため、リプロンの波数選択のための新たな回路格子を導入し改良を加えた。また、防震対策や光学系の高精度化を行うことにより信号のS/N比を向上させ、表面張力のばらつきを±8.9%から±1%以内に抑えることができた。また、測定精度を±8.5%から±4.1%に向上させることができた。 溶融シリコンの表面張力・粘性率の測定を行った。測定試料は、99.9995%のシリコン単結晶であり、温度範囲は融点(1685K)から1850Kであった。計123点の測定値から次の相関式を作成した。ε=800-0.13(T-1685)mNm^<-1> 標準偏差は±0.48%で、測定精度は±4.4%と見積もられた。GDMSにより分析した測定終了後のシリコン中の残量酸素濃度は6.35×10^<17>atoms・cm^<-3>であり、CZ系における表面張力と酸素の関係を調べる上で重要なデータを測定できたと考えられる。表面張力については、密度データによる表面張力の違いや酸素濃度等を含め、他の研究者の測定値と比較した。
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