研究概要 |
本研究は外部入射型双極性パルス電源を実用化するための基礎研究を目的とし,双極性パルス電源および加速空洞の各部の構造が出力波形(加速電圧波形)に与える影響を計算機シミュレーションで調べ,この結果に基づいて加速空洞を試作し,模擬負荷(抵抗とダイオードの直列接続)を用いて出力試験を行うことにより,双極性パルス電源を用いた線形誘導加速器システムの原理を確認すると共に,双極性パルス電源の実用化のための基礎資料を得ようとするものである。特に,理想的な双極性パルス出力を得るためには,電源には低インダクタンスのスイッチを用いる必要があるため,本年度はレーザトリガの並列スイッチの試験を行い,その効果を確認した。 トリガには小型QスイッチNd:YAGレーザの基本波(波長 1064nm,エネルギー650mJ,パルス幅5-7ns)を用いた。基本波を用いるため真空スイッチを採用し,接地電極側から高電圧電極側に向けてレーザ光を入射した。レーザ光を焦点距離150mmのレンズにより高電圧電極面に集光する場合と集光しない場合のスイッチの始動特性を,レーザエネルギーを変化させて比較した。また,レーザ光をハーフミラーで分割入射する場合と分割しない場合のスイッチの始動特性も比較した。その結果,レーザエネルギーが十分で,外部回路で支配される電流値を十分供給できる初期プラズマを生成できる場合には,非常に立ち上がりの速い(数ns以下)電流が得られた。また,初期の電流立ち上がり後は真空アークプラズマによってスイッチ電流が支配されるため,温度,密度が等しいプラズマが生成される場合には,プラズマ断面積が大きい方がスイッチ抵抗は小さくなる。このため,レーザエネルギーが大きいときには,レーザ光を分割入射し,かつ集光レンズを使用しない場合に最も矩形波に近い電流が得られた。今後は,高気圧ガススイッチについても同様の実験を行い,今回の結果と比較する予定である。
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