本研究では、主に代表的絶縁系構成材料である電力ケーブル用ポリエチレンと半導電層の界面やケーブルのプレハブジョイント部の界面に着目し、界面での電荷ダイナミックスの解析を通して、電力機器における複合絶縁系の性能向上への指針を得ることを目的としている。このため、本年度は、絶縁体-絶縁体界面における劣化現象における電荷ダイナミクスと絶縁体内部での空間電荷挙動について観測・検討した。その結果、以下の様な結果を得た。 ・絶縁体-絶縁体界面に関して: 複合絶縁界面でトリー劣化が進行するときには、必ずしも破壊強度の低い材料の方が劣化するのではないことが明らかにし、種々のモデル的な電極系を作製して検討した。その結果以下のことを明らかにした。 (1) 試料の誘電率の差に起因する効果があることが確認され、外部印加電界の変歪と誘起分極電荷の非対称性の寄与があることが示唆された。 (2) 破壊靭性などの機械的特性や圧力の効果があることが確認された。 (3) これらを制御することにより劣化の進行方向を制御し耐劣化性を高めることが出きる可能性があることが示唆された。 ・絶縁体内部の電荷挙動に関して: (1) 空間電荷計測系を改良し、厚物試料においても測定が可能となった。また界面での音波の反射が測定に与える影響の分離を検討した。 (2) 界面付近に蓄積する電荷が絶縁体内部に発生する電荷から受ける影響を検討し、これが界面蓄積電荷の試料厚依存性の原因になり得る可能性が示された。 (3) 界面からの電荷の注入と内部の電荷発生により特異な動的振舞いを示すことを明らかにし、そのモデルを提唱するとともにシミュレーションにより検証した。
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