本研究では、主に代表的絶縁系構成材料である電力ケーブル用厚物の絶縁材料やそれらと半導電層の界面やケーブルのプレハブジョイント部の界面に着目し、電荷ダイナミックスの解析を通して、電力機器における複合絶縁系の性能向上への指針を得ることを目的としている。本年度は、絶縁体-絶縁体界面における劣化現象やそれに伴う空間電荷挙動について観測・検討した。その結果、以下のような結果を得た。絶縁体内部の電荷挙動に関して、(1)実用的に重要な交流電圧印加により、バルク内部の電荷発生速度が増加すること、(2)実用的に重要な厚物試料において金属板ターゲットなどを用いることによりレーザー誘起圧力パルス法により空間電荷分布の測定が安定して行えること、などが明らかになった。また、複合絶縁界面では、必ずしも破壊強度の低い材料の方がトリー劣化しやすいのではないことなどを、昨年度に引き続き、種々のモデル的な電極系を作製して検討した。複合絶縁系の界面ではノイズレベル以上の電荷検出はできず、上記現象に対する蓄積電荷の影響を明らかにすることはできなかったが、(1)実用に供せられる充填材入りEPL(エチレンプロピレンゴム)を用いて複合系を形成する場合にも、上記の現象に対して誘電率の効果があること、(2)高温ではEPRを含む界面ではバブル状の空隙が発生し、絶縁劣化特性に影響を与えうること、などが明らかになった。
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