研究概要 |
本研究では、主に代表的絶縁系構成材料である電力ケーブル用厚物の絶縁材料やそれらと半導電層の界面やケーブルのプレハブジョイント部の界面に着目し、電荷ダイナミックスの解析を通して、電力機器における複合絶縁系の性能向上への指針を得ることを目的としている。代表的ケーブル用絶縁材料であるポリエチレン(PE,低密度PE,架橋PE,変性高密度PE)、半導電層、エポキシ樹脂-EPR(エチレンプロピレンラバー)界面などを試料として実験的検討を加え、主に以下のような結果を得た。 (1)実用的に重要な厚物試料中の空間電荷を金属板ターゲットを用いたLIPP法により測定する手法を確立した。 (2)直流高電圧ケーブル用材料として有望な変性高密度PEと半導電層の界面では電荷注入や生成に基づく空間電荷が形成されることなどを明らかにした。 (3)界面からの電荷の注入と内部の電荷発生により特異な動的空間電荷特性があることを明らかにし、そのモデルを提唱するとともにシミュレーションにより検証した。 (4)電力ケーブルの接続箱で重要なエポキシ-EPRなどの界面での劣化を評価するためのモデル電極を開発した。 (5)上記電極を用いて実験を行った結果、劣化が界面を進行する場合には、必ずしも破壊強度の低い材料の方が劣化するのではないことを明らかにし、誘電率、破壊靱性などの機械的特性、圧力などの効果があることを示すとともに、これらを制御することにより劣化の進行方向を制御し耐劣化制を高めることが出きる可能性があることを示した。 (6)高温ではEPRを含む界面ではバブル状の空隙が発生し、絶縁劣化特性に影響を与えうることを明らかにした。
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