研究概要 |
量子細線・量子箱を用いると,バンド端状態密度の向上などにより半導体レーザの高性能化が期待され,これらの実現を目指してInGaAs系を中心にその製作方法の研究進展が著しい。しかしそのほとんどは波長〜1μmの赤外発光領域に偏っている。一方高密度光情報処理への応用や,光電子融合集積回路においてシリコン受光素子の吸収係数を増大するには,可視,特に短波長領域半導体レーザの高性能化,高効率化,低消費電力化が必要である。特に量子井戸箱に閉じこめられた励起子や励起子分子では大きな振動子強度(大きな光学利得)が理論的に予見されており,元来励起子の束縛エネルギーが大きいワイドギャップ半導体を用いてこれを実現すれば,高性能短波長レーザが実現される可能性が高い。 今年度は,ZnSe量子ドットより発光効率が高い,埋め込んだCdS量子ドットの発光スペクトルを検討した。別の検討から,ZnカルコゲナイトではZn空孔が発生しやすくこれが発光効率を低下させていると考えられる。CdS量子ドットの発光準位へのエネルギー緩和を調査した。その結果,量子準位の近傍で励起すると緩和する際に光学フォノン放出のエネルギー選択則が大きな役割を果たすことがわかった。またZnSe/CdS系はTypeIIのヘテロ構造になること,ZnMgCdS/CdS系ではTypeIのヘテロ構造になることがわかり,発光効率の向上に有利である。これらの量子ドットをレーザ内の電界分布と効率よく結合させるために,このような量子ドットをAFMナノリソグラフィを用いた数10nm領域のパターニング技術を開発し,選択成長で量子ドットアレイを作製することができた。この構造での誘導放出は尚検討中であるが,GaNにInを添加することにより,光励起の誘導放出を観測した。
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