本研究の目的は、エッチングおよび基板表面の構造制御による、プラズマ化学気相成長(PECVD)法を利用しての高結晶性多結晶シリコン膜の低温作製法の開発に関する研究を行なうことにある。本研究では、結晶性の変化に対する、(1)SiH_4原料ガスへのSiF_4の添加効果、(2)SiF_4に加えて、H_2ガスを添加した時の効果、(3)堆積温度を変化させた時の効果、(4)同一の堆積条件下でのSi膜の堆積直前における基板のプラズマ処理の効果、を調べた。結果として、(1)SiF_4の添加により、低堆積温度下での結晶化が容易となる。しかし、多量のSiF_4の添加は、Si膜堆積後の結晶粒界中への空気中酸素の導入の原因となった。また、(2)低堆積温度下でさらに水素の添加量を増加した時、結晶化率は増加するが、結晶粒サイズは減少した。一方、この水素の添加は(1)で見出されたSi膜堆積後の酸素導入を抑制することが判った。さらには、(3)結晶性は堆積温度に強く依存し、150℃以下および650℃の二温度範囲で結晶化の抑制がみられた。(4)プラズマ処理なしの基板上にSi膜を堆積したとき、Si膜の結合構造はアモルファスであったが、プラズマ処理した基板上では結晶Si膜の形成が観測された。このような結晶性の変化は、プラズマ処理に起因する適度な表面荒れの発生は、結晶化を促進するが、しかし過度なプラズマ処理による表面荒れは結晶化を妨げる要因となる、というモデルを提案した。このように、原料ガスへのSiF_4およびH_2の添加、および基板のプラズマ表面処理は高品質多結晶Si膜の形成に有効であった。
|