研究概要 |
本研究は,メモリー用材料として注目されている強誘電体薄膜におけるサイズ効果に関するものである.サイズ効果とは,強誘電体微粒子の粒径や薄膜の暑さが00nmのオーダーに達するとサイズの減少に伴ってキュリー点の低下や誘電特性の変化が生ずる現象である.しかし,サイズ効果のミクロな機構はまだ解明されていない. 本年度は,以下の二つの研究を行った.まず第一に,誘電特性のコントロールにサイズ効果を利用する試みである.これを実現するためには薄膜を構成する微粒子の粒径を,強誘電性を維持できる最小サイズである「臨界粒径」(チタン酸バリウムで約100nm,チタン酸鉛で約10nm)に近づけなくてはならない.粒径は焼成温度が高くなるにつれて増大するので,これを防ぐためにはできるだけ焼成温度を下げる必要がある.われわれは,基板と薄膜の間に「シード層」を導入することによって膜の結晶化温度を低減することを試みた.その結果,たとえばPZTの場合,PbTiO_3をシード層とすることによって550℃という低温でペロブスカイト単一相が得られた.しかし,現段階では,サイズ効果を有効に利用できるまでの微小化には至っていない.第二には,サイズ効果の微視的な原因を明らかにすることを目的として,結晶の表面における格子の緩和現象の研究を行った.前年度までは,微粒子の集合体を用いて研究を行ってきたが,本年度からは個々の微粒子における格子緩和の状況を明らかにすべく,透過電子顕微鏡(TEM)の回折パターンから格子定数を算出して格子緩和の粒径依存性を求めた.その結果,粒径100nm以下で格子定数が増大し,X線回折で得られた結果および第一原理計算の結果と一致することが分かった.
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