研究概要 |
本研究では,傾斜した単結晶基板上に強磁性Coのナノワイヤーの作製を目標としているが,本年度は,単結晶基板上へのFe超薄膜のMBE成長とその表面構造の解析について検討を行った。また,磁性細線を観察する手段としてMBEチャンバと連結した超高真空中で観察可能な走査トンネル顕微鏡の作製を行っているが,本年度は,解像度を上げるために,トンネル電流を増幅するヘッドアンプの低ノイズ化を図った。本年度のおもな成果を以下にまとめる。 1. 貴金属下地層の上にCoやFeのナノワイヤーを成長させるためには,原子層レベルで平坦な表面を作る必要がある。ここでは,鏡面研摩したMgO(100)基板上にFe超薄膜の成長を試みた。RHEEDによってMgO基板が清浄であることを確認した後,Fe2nmをMBE成長させたところ,bcc-(100)面が基板面に平行に成長した。保護膜としてAuを10nm成長させた後,MBEチャンバから取り出して,AGMによって磁化特性を測定した。2nmのFe層の飽和磁化は120emu/ccほどの値しか示さず,バルク値より非常に低い値となった。これは,Fe層がMgO基板との格子ミスフィットによって5%程歪んでいるためと考えられる。 2. 昨年度は,成膜直後の膜表面を観察可能な走査トンネル電子顕微鏡の作製をおこない,MBE室の隣に設置した超高真空容器のなかに据え付けた。今年度は,STMの分解能を改善するためヘッドアンプの交換と針交換が真空を破ることなく行なえるよう改造を行った。改造後の動作については現在,調整を行っている。
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