研究概要 |
本年度は,分子線エピタキシー(MBE)とSTMを連結した超高真空システムを完成させ、MBE成長させた貴金属表面のSTM観察を行うとともに,貴金属上にCo超薄膜をエピタキシャル成長させ,そのSTM観察を行い,Coの局所構造と磁気異方性について系統的に検討を行った。 (1)MgO(111)基板上にAg(30nm),Au(60nm)の順に室温でエピタキシャル成長させたAu表面は,数nmのなだらかな凹凸で覆われている。この上にCoを成長させると,ほぼfcc構造を取り,表面形状があまり変化しないことから,ほぼCoはAu(111)上に層状成長していると考えられる。 (2)Auに代えてPtをエピタキシャル成長させた場合もほぼ同様であった。このことから,Au(111)およびPt(111)上のCo超薄膜の垂直磁気異方性への磁気弾性界面異方性の寄与は,Co層が一様に歪んでいるとするモデルで解析できることが分かった。 (3)MgO(001)/Ag(30nm)/Au(60nm)上にCoは,粒状成長し,その構造は,X線解析からhcp構造のc軸が膜面に平行となったものであることが分かった。 (4)MgO(001)/Ag(30nm)/Au(60nm)上に成長させたCoは,粒状成長し,非常にラフネスの大きな表面となった。これは,fcc-Co(001)面の成長に伴い,その側面に積層欠陥を伴う(111)ファセット面が3次元的に成長したためと考えられる。 (5)MgO(001)/Ag(30nm)/Au(60nm)膜を超高真空中,300℃で熱処理したところ,atomicにフラットなテラスと1から数原子のステップをもつ非常に平坦な表面が得られた。その上に0.5nm成長させたCoは,直径10から20nmの円形のドット状となり,その高さは,2から4モノレイヤーであった。
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