研究概要 |
有機電界発光(EL)素子は近年実用化に向け盛んに研究・開発されている。しかしながら、その基礎的な面は不明な点が多く残されている。本研究では、将来の発光表示素子への応用が期待できる色素分子を用いた有機物による量子井戸構造、超薄膜をEL素子に適応することにより、従来の分子単体の持つ資質とは異なる特性を引き出し、EL素子に適応することについて検討を行った。本年度は特に、有機金属界面への超薄膜の挿入効果による発光特性の向上と発光色可変素子の作製を行ない、発光表示素子としての基礎的な検討を行なった。 有機-金属界面への超薄膜の挿入効果の検討については、アルミニュウムキノリ錯体(Alq_3)を発光層とし、ジアミン誘導体(TPD)を正孔輸送層とする素子を用い、ITO陽極と正孔輸送層の界面、または陰極と発光層の界面にアルカリハライド(LiF,NaCl)、酸化絶縁薄膜(LiH,Al_2O_3,PbCl_2)等の種々の超薄膜を挿入することの効果を検討した。さらに陰極材料(Mg,Al,Au)による依存性についても検討を行なった。 その結果、LiF薄膜を陰極と発光層界面に挿入する事により発光効率が約2倍に向上すること、更にAl_2O_3またはPbCl_2超薄膜をITOと正孔輸送層界面に挿入することにより同じく発光効率が約2倍に向上することを見い出した。これらの結果はそのメカニズムは異なるが、キャリアの注入バランス、金属有機界面での注入障壁の押し下げ効果によることを明らかにした。 積層構造素子において、複数の発光層とキャリアブロック層からなる素子を形成し、印加電界方向の反転によりキャリア注入領域を制御することにより発光色がスイッチング可能な有機已素子を実現し、さらに、この上部に他の発光層を形成して異なる3原色(RGB)の発光を得ることが出来た。これらの結果により、将来の発光表示素子への応用へ向けての基礎を築く事が出来た。
|