本研究期間に、ミリ波帯において1W以上の出力を持つ連続動作型高出力固体発振器の開発を目指し、2次元アレイ化した多数の固体素子を用いた空間電力合成型発振器の開発を行った。以下に、得られた研究成果について述べる。 1. オーバーモード導波管共振器を新たに提案・開発し、ミリ波帯ガンダイオード9個を用いた電力合成実験に成功した。その結果、周波数60GHz帯で最大出力1.5W、合成効率83%、周波数同調範囲4.6%を達成し、本研究目的を達成した。また、この値は、ミリ波帯固体発振器としては世界トップクラスのものである。 2. オーバーモード導波管型ガンダイオード発振器の高周波化に取り組み、98GHz帯にて、出力0.45W、合成効率50%以上を達成した。この結果から、本共振器構造が、短ミリ波帯でも高効率電力合成が可能なことを示した。更に、電力合成型発振器において、使用素子数の逆数に比例した雑音特性の改善効果を実験的に検証し、低雑音高出力ミリ波帯発振器の実現が可能であることを明らかにした。 3. オーバーモード導波管型ガンダイオード発振器の等価回路を用いた設計法を開発した。 4. 誘電体基板上に2次元的に配列した多数個のHEMT素子を持つ金属回折格子型ファブリ・ペロー共振器の等価回路を理論的に構成し、15GHz帯でその回路の正当性を実験的に確認した。また、50個を越える多数個の素子を、共振器に均一に組み込む新たな実装方式を考案し、その共振器の製作を完了した。 5. サブミリ波帯の電力合成型発振器用素子として、共鳴トンネルダイオード(RTD)素子について検討し、この素子の問題点である低周波域でのスプリアス発振を抑えるため、新たに直列接続型RTD構成法を提案した。そして、理論解析結果に基づき、その有用性をマイクロ波帯で実験的に確認した。
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