研究概要 |
1968年にSzeにより提案された、ソース、ドレイン接合に、PN接合の代わりに金属-半導体によるショットキー障壁を用いるショットキー障壁MOSFET(Schottky Barrier Tunnel Transistor,SBTT)は、浅接合による駆動電流の減少を解決する新たなデバイスとして近年研究されている。しかしながら、報告されているSBTTは従来のMOSFETとは動作原理が異なり未解明の部分も多く、直ちに従来のMOSFETを置き換え得る性能を有するに至っていない。本研究ではSBTTの持つ欠点を補いかつ従来のMOSFETでは到達不可能な短チャネルデバイスを実現することを目指し、ノンドープショットキー障壁SOI-MOSFETを提案した。試作に先立ち、ショットキーダイオードとMOS構造とからなるショットキー障壁MOSFET等価回路の解析の結果、低ショットキー障壁では従来のMOSFETと同等の駆動電流が期待できることを示した。解析結果をふまえ、チャネル領域を低ドープとし、ソース、ドレイン領域にミドルバリア材料であるTiSi_2を用い、セルフアラインおよびノンセルフアライン2通りのプロセスによって試作を行った。その結果、SOI基板ではバルク基板を用いる場合に比べ、オフ電流が減少しオンオフ比が向上することがわかった。また、TiSi_2は障壁高さがSiの禁制帯幅の中間付近に位置するという特徴を生かし、ゲートが仕事関数の大きな電極材料ではP型デバイス、小さな材料ではN型デバイスとして動作させることができることを示した。仕事関数がその中間の電極材料を用いれば、ゲート電圧正負双方向にオン可能という従来のMOSFETにない性質を有する。その結果、ソース、ドレインに同一材料を用いたままゲート電極を変更することにより相補動作SBTTを実現できる可能性を示すことができた。
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