研究課題/領域番号 |
09450142
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤巻 朗 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20183931)
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研究分担者 |
赤池 宏之 名古屋大学, 先端技術共同研究センター, 助手 (20273287)
井上 真澄 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 講師 (00203258)
早川 尚夫 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60189636)
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キーワード | 高温超伝導体 / ジョセフソン接合 / 金属-絶縁体転移 / 局在準位 |
研究概要 |
高温超伝導体ジョセフソン接合の高品質化・高性能化の指針を得ることを目的に、人口トンネル障壁を有したランプエッジ型ジョセフソン接合のデバイス物理の解明を試みた。障壁材料のPrBa_2Cu_3O_δは金属-絶縁体転移近傍にある絶縁体であるが、Caドープにより転移の極近傍に対応する1mΩcmにまで抵抗率が低下する。一方、Gaをドープすると抵抗率が低温で通常の絶縁体と同じレベルの10^5Ωcmにまで達する。抵抗率の温度依存性は、障壁中に含まれる局在準位の密度(g)とその体積(v)の積(gv積)の関数として表されることから、障壁材料の伝導が可変長ホッピングによっていることが明らかとなった。また、Caドープによりgv積はノンドープ時に比べ1桁増加し、逆にGaドープにより4桁減少している結果が得られた。さらに、接合の障壁膜厚依存性から、(1)ある程度以上の膜厚の場合には準粒子は局在準位を2個以上経由して障壁を伝導すること、(2)膜厚が薄い場合の準粒子の伝導は直接トンネルもしくは共鳴トンネルであること、(3)低温では準粒子とク-パ-対は同じ伝導機構であることの3点が明らかとなった。他研究機関の実験結果及び最近提案された理論との対比により、ランプエッジ接合における伝導機構はク-パ-対、準粒子ともに直接トンネルの可能性が高いものと推測される。ただし、準粒子については一部共鳴トンネルもコンダクタンスの増加に寄与しているものと考えられる。Gaドープ時に品質パラメータの向上が見られ、逆にCaドープ時には低下しているが、これは電超伝導極と障壁中の局在準位が混成軌道を形成し、そこが一種の常伝導層として振る舞うためと解釈される。再現性の高い接合形成技術開発には、エッジ面の更なる解析が必要である。
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