開発した高清浄ヘテロエピタキシャル気相成長装置を用いて、SOI基板上に形成したSiGeチャネルMOSFETのデバイス化のキーポイントになる単一量子井戸の形成条件を探索し、高精度・高品質のSiGe量子井戸の形成技術を確立した。形成した量子井戸は、電子顕微鏡、二次イオン質量分析、フォトルミネッセンスなどの物理的・光学的な分析手法により、無欠陥で急峻な界面を有し、理論値と一致した量子エネルギー準位を示すことを確認した。特に、ヘテロ界面の急峻性についてはこの分野のトップデータを提供できた。この結果を踏まえ、SOI基板(ここではSIMOX基板を使用)を用いた部分空乏型のSiGe量子井戸チャネルの素子(ゲート酸化膜厚5.9nm、Siキャップ層7nm、Si0.8Ge0.2量子井戸幅13nm、SOI層280nm)を試作し素子特性を調べた。その結果、SiGe単一量子井戸チャネル素子のサブスレッショルド領域で、SiGeチャネルにホールがトラップされてしきい値電圧が減少しており、飽和領域でI-V特性が正常な素子特性を示していることなどから、MOSFETにおけるSiGeチャネルの存在が確認できた。次に、開発した量子井戸デバイスのシミュレータを利用して、SiGe量子井戸の組成比や量子井戸幅とエネルギー準位、熱プロセスにおける準位の変化などに関する理論的なデータを収集した。これと並行して、エピタキシャル気相成長装置を用いて形成した多重量子井戸の井戸幅及び井戸間隔の形成精度や界面品質の評価を進め、理論値と比較検証した。これらの結果をもとにデバイス化のための素子構造やプロセスなどの条件を確定した。
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