研究概要 |
1. フラクタル符号化において,微小な基本ブロックを統合して可変形状のレンジブロックとする新しい領域適応フラクタル符号化方式について研究し,以下の成果を得た. (1) 基本ブロックの統合において,誤差そのものではなく誤差の増加量を統合基準とする新しい方式を提案し,圧縮性能が約1dB向上した. (2) (1)の方式において,誤差の増加量のしきい値を一定にするよりも,小さい値から次第に増加させることが統合の最適化に有効である. (3) ある順序でレンジブロックを統合した後,その逆順にレンジブロックの周りのブロックを統合し直すことにより,統合の順序による影響をほぼ完全になくすことができた. (4) (1)〜(3)の工夫により圧縮性能が約2dB向上した. (5) 復号時収束回数を符号化時に指定できる手法を提案し,これより復号が一定時間内に終了できることを示した. 2. 領域適応圧縮アルゴリズムの中核をなす技術であるブロックマッチングについて研究し,以下の成果を得た. (1) ブロック間の自乗誤差の計算を最小限に抑える計算アルゴリズムを提案し,約3倍の高速化を実現した. (2) 探索方法の変更,探索範囲の限定を施すことにより,更に2倍の高速化を実現した. 3. 既に復号された領域を利用する圧縮符号化において,圧縮データの遅延や反復打ち切りなどにより着目する領域の復号が正常に行われなかった場合,そのデータを廃棄せずに利用し,次の領域の復号時までに内部データを更新する手法を提案し,誤りの伝搬の回避に大きな効果があることを示した. 以上のように,領域適応化の要素技術を統合し高性能化することにより,さまざまな圧縮方式において生ずる諸問題を解決し,符号化性能の向上を実現することができた.
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