電磁妨害波測定用実験室として、電波無響室と磁気シールドルームを取り上げ、それらの高性能化に関する研究を実施した結果、以下の成果が得られた。 (1)電波無響室の高性能化:発泡フェライトという新規の電波吸収体を使用した電波無響室を建設することにより、吸収体の厚さを10cmと、従来の1/10に低減できることを実証した。30MHz〜10GHzの周波数でこの厚さを実現したのは、本研究が世界最初である。一方、数十GHzまで広帯域化するには、発泡フェライトの上に通常のカーボンピラミットを装着する必要があるが、数百MHzの特性を低下させずに装着する方法を見出した。 (2)電波無響室の電磁界シミュレーション:電磁波を光線で近似したレイトレース法により電波無響室の電波伝搬特性を計算する方法を確立し、高周波における電波無響室の特性改善法をシミュレーションにより評価した。また、200MHz以下の低周波における電波無響室のシミュレーションに適用するため、FDTD(有限差分時間額域)法を用いた計算方法も確立した。 (3)磁気シールドルームの磁性材料:自作した磁性薄膜作製測定システムを用いて、磁性・誘電体超格子を作製し、磁性を保持した状態で、電気抵抗を制御できることを見出した。また、極低温ではあるが、従来の同じ系統の材料に比べ、100倍以上も透磁率を高める新現象と思える効果を発見した。
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