研究概要 |
本研究は誤り訂正能力と自己再構成能力を兼ね備えた高度耐故障化集積回路システムの為の基礎理論構築を目指すものでありる.平成10年度においては,1.並列化システムのオンライン誤り検出・診断のためのアルゴリズムレベルチェック構成,2.オンライン誤り訂正のための時間・空間的多重化構成,3.マルチプロセッサネットワーク再構成のためのアーキテクチャ構成,4.故障診断容易化のためのシステムアーキテクチャ設計自動化に関して検討を行い,以下の結果を得た. 1. 並列化システムのオンライン誤り診断のためのアルゴリズムレベルチェック構成:並列化システムの解析モデルとしてのModified Processor-Data(MPD)Graphを利用し,(a)正常なPEが正常なデータのみを使って生成したデータは正常である,(b)正常なPEが唯1つの誤りデータと幾つかの正常なデータを使って生成したデータは誤りである,の2点のみを確かなこととして仮定した誤り生成・伝播モデルの下で,故障PEを特定する単一故障診断のためのチェックの条件とその一構成手法を導出した. 2. 時間・空間多重化に基づく誤り訂正シストリックアレイ:多重化された全ての計算において入力データの多数決処理を伴う高信頼計算においては,そのデータ通信量は膨大なものとなる.システムの設計においては,データ転送の資源(通信線)共有が不可欠となるが,多重化の有する誤り訂正能力を損なう可能性もある.ここでは,本来有する誤り訂正能力を少しも損なうことなく資源共有を行うための条件を明確にし,誤り訂正能力を保った資源最小化(共有最大化)手法を導出した. 3. マルチプロセッサネットワーク再構成のためのアーキテクチャ構成:補償パス生成による再構成において,配線再構成を保証するアーキテクチャ(冗長配線アーキテクチャ)の条件について考察を行った.この結果,2次元トーラスメッシュをターゲットとする再構成において,隣接PE代行に基づく再構成(但し,補償パスが存在することを前提として)が各PE間チャネルに8本の配線トラックを用意することで保証できることを証明した.また,シミュレーション実験によって,各PE間チャネルに6本の配線トラックを用意することで非常に高い確率で隣接PE代行に基づく再構成が可能であることを示した. 4. 故障診断容易化のためのシステムアーキテクチャ設計自動化:故障診断容易化のための内部信号の可制御性・可観測性を高める技術としてスキャン方式がある.集積システムアーキテクチャをスキャンレジスタ挿入を前提として最適化する設計方法論を検討・導出した.
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