研究概要 |
今年度は前年度の成果を引き継ぎさらに発展させていくために,特にモデル集合のシステム理論の基礎を構築することを中心に研究を行なった. モデル集合の表現としては連鎖散乱表現に基づくものが有用であるが,この表現は一意ではなく,同一のモデル集合が異なった表現を持ちうる.今年度の研究により二つの連鎖散乱表現が与えられたとき,この二つが同一のモデル集合を表現しているための必要十分条件を求めることができた.ロバスト制御で用いられることの多い不確かさの加法的摂動表現や乗法的摂動表現は,連鎖散乱表現の特別な場合であり,上記の結果を使うことによってこれらの表現についても同一性のための必要十分条件を得ることができる. この他にもモデル集合の同定・検証については,AAK理論に基づくものやパラメータ空間の幾何学に基づくものを提案している.またモデル集合の位相的性質を表すものとして提案したモデル集合の直径は,モデル集合の同定法の性質を解析するのに有用であることがわかった.さらにモデル集合の概念を利用した新しい制御系設計法として,時変ゲインをパラメータとする二次安定化法を提案している. 本研究の結果,特に複雑度という観点からモデル集合を研究することが重要であると考えるようになった.そのため,現在平成11年度科学研究費補助金基盤研究(B)として「複雑度にもとづくモデル集合の解析と時変制御に関する研究」を申請中である.
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