本研究では、逆問題解法をネットワークインバージョンという枠組みの中で実現するに当たり、Tikhnovの正則化手法を、ネットワークのエネルギー関数について直接取り入れる方式について検討を行った。この技術を適用するにあたり、我々が提案した「動的正則化」の手法では、正則化係数λを最初は大域的なフィッティングが可能なように大きくし、収束状態に近づくにつれて、より細かいフィッティングが可能なように小さくしてゆく。このことにより、いわゆるローカルミニマに捕捉される確率を低下させることができ、かつ眞の解へ安定に収束させることができる。 今年度は先ず、一つの応用例としてPET画像修復の際の逆問題をとりあげ、逆問題解析ネットワークの機能をPETシミュレータネットを用いて作成したファントム画像について評価し、静的な正則化や従来法に較べて、動的正則化がその結果の品質、および演算速度において優れていることを示した。 また、本年度はエネルギー関数にペナルティーとしての正則化項を加えたネットワークインバージョンの手法を、単眼画像から曲面形状を推定する逆問題、および脳表面電位分布から、脳内等価ダイポールのパラメータを推定する逆問題に対しても適用し、問題固有なアプリオリ情報の記述方法などについて、計算機シミュレーションを含めた予備的な検討を行った。
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