高分子ゲルのファントムを用いた被曝量計測法に定量性を与える目標に対し、以下のような成果を得た。すなわち、 1. 白濁領域表面は等温度面であり、白濁に要した時間(照射時間)、白濁前の温度、比熱が分かれば、被曝量は生体熱伝達方程式からSARの値で算出できる。このSAR値を与える白濁領域表面をレーザーレンジファインダを用い2mm以下の誤差で三次元計測する手法を開発した。 計測時間は11秒程度を要しているが、これは使用したミラー走査用ステージの速度に依存しており、一層の高速化は可能である。 2. 白濁領域表面、厳密に言えば白濁領域と透明領域の境界は等温度面であることは白濁原理から自明である。しかし、この白濁境界面が等電力吸収面であるかどうかは証明を必要とする。円筒型ファントムにダイポールアンテナを接近させて配置した場合のファントム内外の電磁界分布をFD-TD法により計算し、等電力吸収面を三次元的に求めた。得られた等電力吸収面は写真撮影された実際の白濁境界とよく一致することを示した。以上の結果、感温性高分子ゲルのファントムを用いることにより局所被曝量がSARの尺度で定量計測できることを示した。 3. ファントム内の熱伝達が無視できる範囲内において白濁状態から局所被曝量が算出できるが、その測定精度について検討するとともに、感度向上策について検討した。測定時間の制限もあるが、比熱や熱伝導率は水のそれとほぼ等しいのでかなりの時間、熱伝導は無視でき、少なくとも1分程度の照射時間では問題がないことを示した。
|