高分子ゲルのファントムを用いた被曝量計測法に定量性を与える目標に対し、以下のような成果を得た。すなわち、 1. 代表的な周波数で基準となる高分子ゲルの標準ファントムを開発した。これを元に、数回の試行錯誤を繰り返せば所望の特性を備えたファントムを作製することができる。 2. 生体被曝量を、白濁に要した時間(照射時間)、白濁前の温度、比熱から求め、SARの値として算出する方法を確立した。また、このSAR値を与える白濁領域表面をレーザーレンジファインダを用い2mm以下の誤差で三次元計測する手法を開発した。これにより被曝量の三次元計測法を確立した。勿論、ファントムの一部が三次元的に白濁する様子を視覚的に観察することができ、被曝量を手軽に可視化する目的にも広く利用可能である。 3. 円筒型ファントムにダイポールアンテナを接近させて配置した場合のファントム内外の電磁界分布をFD-TD法により計算し、等電力吸収面を三次元的に求めた。得られた等電力吸収面は写真撮影された実際の白濁境界とよく一致することを示し、感温性高分子ゲルのファントムを用いることにより局所被曝量がSARの尺度で定量計測できることを示した。 4. ファントム内の熱伝達が無視できる範囲内において白濁状態から局所被曝量が算出できるが、その測定精度について検討するとともに、感度向上策について検討した。測定時間の制限もあるが、比熱や熱伝導率は水のそれとほぼ等しいのでかなりの時間、熱伝導は無視でき、少なくとも1分程度の照射時間では問題がないことを示した。 以上の通り、被曝量を三次元的に観察、または三次元計測する手法を開発した。
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