本研究の初年度にあたる平成9年度には、2塑性ヒンジ系の代表として、免震支承と同時に橋脚基部に塑性ヒンジが形成される免震橋を取り上げ、免震支承と橋脚基部の2カ所で塑性ヒンジ化する場含の塑性ヒンジ間の動的相互作用を検討した。 本解析の結果、主たる塑性ヒンジ(免震支承)とサブの塑性ヒンジ(橋脚基部の塑性ヒンジ)の塑性化の度合いは、両者の履歴特性、特に2次剛性によって大きく異なることが明らかとなった。一番基本的な両者が完全弾塑性バイリニア型の履歴特性を有する場合には、両者の降伏耐力が重要であり、これが塑性ヒンジの相対卓越度を規定する。したがって、降伏耐力の小さい方の塑性ヒンジの塑性化が進展し、降伏耐力の大きい方の塑性ヒンジ化は進展しない。 これに対して、主たる塑性ヒンジが正の2次剛性を有するバイリニア型の履歴特性を持ち、サブの塑性ヒンジが完全弾塑性バイリニア型の履歴特性を有する場含には、サブの塑性ヒンジの降伏耐力が主たる塑性ヒンジの降伏耐力よりも大きければ、応答の当初には主たる塑性ヒンジの塑性化の方がサブの塑性ヒンジよりも進展するが、やがて主たる塑性ヒンジに生じる応答変位がある程度大きくなると2次剛性のために、主たる塑性ヒンジの復元力の方が、サブの塑性ヒンジの復元力よりも大きくなり、主たる塑性ヒンジではなくサブの塑性ヒンジの塑性化が進展するようになる。すなわち、主たる塑性ヒンジの入れ替わりが生じ、塑性ヒンジの相対卓越度が著しく減少することがあることを明らかにした。これは、免震橋における免震支承の剛牲を規定する場含等のように、2ヒンジ系の基本的な特性を表すために重要であり、耐震設計にいろいろな形で用いることが可能である。
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