本研究は、歴史的な土木構造物の中で、特に石造構造物の保存に構造および材料工学の立場から注目したものである。切り出された自然石を空積みした石造構造物のような不連続体の静的および動的解析には、連続体と違って種々の困難があり、その残存強度や耐震性を適切に評価する構造工学的手法はまだ確立されていない。本研究では、不連続体モデルによる石造構造物の非線形解析法を新たに提案し、歴史的石造構造物の残存強度や耐震性の評価を行っている。 前年度は土中、水中、地表上等、石材の置かれた環境別に、石造構造物現地の廃石材を用いて石材の地質学的試験および物理的・力学的特性試験を行った。 今年度は、不連続体力学モデルによる石造構造物の静的破壊挙動のコンピュータシミュレーションを行った。切り出された自然石を空積みした石造構造物のような不連続体の静的安定解析法はまだ確立されていない。ここでは、古いアーチ橋のような石造構造物を個別の石材ブロック要素からなる不連続体として扱い、前年度に明らかにされた材料の変形および強度特性を要素境界面の分布ばねに集約させる非線形解析モデルを提案した。購入した動ひずみ測定カードおよび電圧測定カードは、提案モデルによる石造構造物の安定性および破壊挙動のシミュレーション、さらに同構造物の動的応答解析の照査実験に使用した。
|