研究概要 |
本研究は3年がかりの第2年目のものであり、その研究実績は次のとおりである。 1) 二段階変動荷重におけるき裂進展特性について 実験項目は(1)供試体のマシンノッチ先端より1mm,3mm,5mm点に動的ひずみゲージを貼付し応力-ひずみ曲線より変動荷重下によるき裂開閉口応力を求め、クラックメーターを併用し、高レベル荷重時と低レベル荷重時での実時間歴におけるき裂進展の挙動を調べた。その結果、高レベル時の亀裂開閉口応力は低レベル時の開閉口応力に支配されることが明らかとなった。 2) 塩水環境下での繰り返し荷重による鋼の微視き裂挙動の影響 供試体を完全塩水浸漬状態に設置するために、アクリル樹脂製の腐食セルボックスを製作した。腐食セルボックスの製作は循環腐食溶液中でも繰り返し荷重下における疲労き裂挙動を精度良く連続動的観察することが最大の課題であったためである。腐食セルボックス中の供試体は、腐食水に常時接触している。使用した腐食水は3%Nacl水溶液で、常時温度25゚,酸素循環状態で、PHは7〜8である。腐食溶液は100cc/minの速さで循環した。 この結果より (1)繰り返し載荷重が増加するに伴い、き裂進展速度も増加することがわかった。塩水環境下では載荷重レベルの違いが顕著にき裂進展挙動に影響した。(2)環境条件に関わらず載荷重条件が小さいければ、き裂進展速度の遅い微視き裂領域が存在しないことがわかった。(3)塩水環境下では応力条件によってき裂発生時期は左右されることを実験により示した。(4)き裂進展に実際に関与するき裂進展駆動力が塩水環境下では全載荷重の85%となる。これに対して大気環境下では約75%であった。塩水環境下のほうが約1割ほど大きい。このき裂進展駆動力の割合から塩水環境下のほうが大気環境下に対して、き裂進展速度が速いことが説明できた。(6)下限界値〓K_<th>は塩水環境下では2は3.145MPa√m、大気環境下は2.208MPa√mと塩水環境下のほうが高い実験数値を示した。
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