研究概要 |
本研究は河口二層流の非定常混合機構に関するものである.ここで,非定常要因としては風,潮汐,流量,外乱(うねり)などを対象としている.これらの要因の中で風,潮汐に関してはそれらの強度と界面を通しての連行量との間に良い相関のあることが知られている.しかし,その力学機構の解明には,未だ,多くの時間を必要と思われる.本研究の目的はその機構解明にある. 1997年度と1998年度は石狩川下流部の45kmにわたる感潮領域において以下の観測を実施した.1)6地点における表層塩分の2カ月にわたる自記記録,2)2地点における2週間にわたる鉛直6水深の塩分測定,3)3地点における2カ月にわたる超音波測深機による界面位置の計測4)一昼夜にわたり河口において超音波測深機を用いた界面の観測と流速分布密度分布の観測5)塩水楔の縦断観測.観測結果を解析した結果を要約すると以下のようである.1)石狩川における界面抵抗係数は,従来,f=CΨ^<-0.5>=0.25Ψ^<-0.5>が成立するとされてきたがCは定数ではなく,およそ,C=0.05e^<0.006Q>と表せる.ここに,Qは流量である.しかし,このCを用いて塩水楔の形状を予測しても予測値は河口から中央にかけて界面水位を過大に見積もる.2)鉛直6水深の塩分測定により風速との関連が明白になった.風速の増加につれて界面からの塩分拡散が増強されるが上層内での濃度勾配は極めて小さい.すなわち,風要因によって下層から上層に連行される塩分は直ちに上層内に拡散されることが確認された.3)河川に沿う風向で,風速5m/sec程度の条件下ではラングミュアー渦が発生しなかったが,周期が2.5secと10〜20secの流速変動が水深0mから4mの領域で検出された.両者はいずれも波浪に起因するが,観測時には界面の存在が無く,界面波に起因するものではない.このことから,塩分拡散の機構として,ラングミュアー渦以外に,従来は重要視されていなかった波浪による流速変動が考え得ることが分かった.
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