小川原湖の塩分循環に関する現地研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09450187
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 石川 忠晴 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (50159696)
• 研究分担者: 藤原 広和 八戸工業高等専門学校, 講師 (70199389) ; 西田 修三 大阪大学, 工学部, 助教授 (40172663) ; 長尾 正之 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (70251626)
• キーワード: 塩分遡上 / 複断面水路 / 湖上風分布 / ヤマトシジミ / 環境因子 / 成層状況 / 乱流混合 / 狭窄部

研究概要

本年度は、以下の項目について検討した。
1. 高瀬川塩分遡上について
小川原湖の排水河川である高瀬川に水位計を設置し、水位変化と塩分遡上の関係について考察した。また、高瀬川を模擬した狭窄部を有する複断面水路での塩分遡上の形態について実験的に検討した。その結果、狭窄部に生じる渦が塩水混合を促進させていることがわかった。
2. 小川原湖の湖上風分布について
小川原湖の湖流の主たる外力である湖上風の分布を現地観測し、その結果を用いて三次元流動計算を行い、湖上風の非一様性が湖流に及ぼす影響を調べた。その結果、周囲地形の影響によって歪められた風の場が湖水に平面的トルクを与え、縦断的な環流を発生させる可能性が示唆された。
3. 小川原湖のシジミの特性について
小川原湖にはヤマトシジミが広く生息しているが、その色や成長速度は流域ごとに異なっている。そこで、湖内の十数地点においてシジミを採取し、その色と成長速度を調べるとともに、各地点の環境因子を計測し、両者の相関を調べた。
4. 小川原湖の成層状況及び乱流混合
2週間に一度の頻度で、小川原湖湖心部の水温・塩分成層を計測した。また、夏季の約1ヶ月間に、湖心部に超音波ドップラー流速計と水温塩分計を設置し、湖水の流動と成層変化を観測した。その結果、吹風にともなって躍層付近に高シアー域が形成され、混合が促進されることがわかった。また、混合のエネルギーと風の供給エネルギーには良好な相関関係が認められた。

研究成果

• [文献書誌] 長尾正之、石川忠晴、長島伸介: "小川原湖に発生する傾斜プルームの現地観測と連行係数の推算" 土木学会論文集. No.579/II-41. 105-114 (1997)
• [文献書誌] 鈴木 伴征,鶴田泰士,石川忠晴: "河川湖沼等におけるDOの空間分布の高速計測" 水環境学会誌. 第21巻第7号. 769-774 (1998)
• [文献書誌] 鶴田泰士,石川忠晴: "殻脈を利用した小川原湖ヤマトシジミの成長速度推定" 水工学論文集. 第42巻. 571-576 (1998)
• [文献書誌] 盛林哲,長尾正之,石川忠晴: "小川原湖に発生する塩水傾斜プルームの可視化観測" 第25回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集. 292-293 (1998)
• [文献書誌] 石川忠晴,長尾正之,盛林哲: "小川原湖に発生する傾斜プルームの音響探査観測" 可視化情報. Vol.19 No.72. 34-41 (1999)
• [文献書誌] 石川忠晴、長尾正之: "Galerkin法による傾斜プルーム連行則の近似解析" 水工学論文集. 第43巻. 935-940 (1999)
• [文献書誌] 椛沢正樹,藤原広和,竹ヶ原大輔: "小川原湖の塩分分布に関する検討" 平成10年度 土木学会東北支部技術研究発表会講演概要集. (印刷中). (1999)
• [文献書誌] 成田好亮,藤原広和,福沢綾太: "狭窄部が存在する複断面水路の塩水混合に関する実験" 平成10年度 土木学会東北支部技術研究発表会講演概要集. (印刷中). (1999)
• [文献書誌] 佐々木純,西田修三: "小川原湖の塩分循環と湖水流動" 平成9年度 土木学会東北支部技術研究発表会講演概要集. 178-179 (1998)
• [文献書誌] 西田修三、中辻啓二: "緩混合河川における流量と塩分輸送量の算定" 水工学論文集. 第43巻. 869-874 (1999)
• [文献書誌] 佐野俊幸、西田修三: "風による湖水の流動と成層構造の変動特性" 平成11年度 関西支部年次学術講演概要. (発表予定). (1999)