研究概要 |
柱梁溶接接合部をモデル化したト形試験体を用いて、載荷速度と試験温度をパラメータとした破壊実験を行った。柱梁接合部は工場溶接による通しダイアフラム形式とし梁端ディテールは改良スカラップ工法とした。動的載荷については15℃,0℃,-20℃で、静的載荷については40℃,15℃,0℃,-20℃で、繰返し漸増振幅による載荷を変位制御で行った。実験結果を以下に示す。 1. 動的載荷は、加力点で20cm/sec程度の載荷速度が、また突合わせ溶接止端部近傍に貼付したひずみゲージから20%/sec程度のひずみ速度が得られた。また梁端部のフランジ幅中央に貼付した熱伝対で5℃程度の温度上昇が確認され、ひずみ集中部ではより温度が上昇していると考えられる。 2. 全試験体でフランジ幅端部の溶接止端部に延性的に亀裂が進展し、延性亀裂の先端を起点とし脆性的に破断した。-20℃,0℃では延性破面がフランジ幅端部から10mm程度であったが、静的載荷は40℃で、動的載荷は15℃で延性破面が破断面の50%を占めた。 3. 累積塑性変形倍率は、同試験温度で静的載荷に比べ動的載荷の方が大きい結果となった。動的による梁端部の温度上昇が影響を与えた要因の一つとして考えられる。また載荷速度によらず試験温度の低下に伴い小さくなり、動的載荷の方が静的載荷に比べ低下が著しい。柱梁溶接接合部においても温度の低下は脆性的な破壊をしやすい状態にし、変形能力を低下させるといえる。 なお、初年度追加採択分の交付であったため、各種試験体製作、柱梁溶接接合部試験体の高速載荷破壊実験をはじめとする各種実験の日程調整、実験データの整理及び比較検討等、初年度の研究の遅れが一部今年度にずれ込んだことから、まとめるに至っていない。
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